婚姻関係破綻と別居後の不貞行為
婚姻関係破綻と別居後の不貞行為について説明いたします。
婚姻関係の破綻とは
芸能人の不倫が明るみになった時などに、「すでに婚姻関係は破綻している」という主張を聞くことがあります。
これは一体どういうことなのか?
まず、不倫をしたとしても婚姻関係が破綻している場合は不貞行為とはなりません。
本来は違法行為であるものが「婚姻関係の破綻」という一定の条件によって違法行為とはならなくなり、いわゆる「慰謝料」を請求されることもなく、一切の法的責任がないことになります。
ですので、不倫が発覚した時に婚姻関係の破綻を持ち出し「実は何ら責められる理由はない」という主張をしているわけです。
しかし、実際には婚姻関係破綻の状況にはなく「不貞行為を正当化する」もしくは「不貞行為の責任から逃れる言い訳」に使っているだけのケースが見受けられます。
これは芸能人だけではなく、一般的な不倫トラブルでもよく見られるケースです。
そもそも婚姻関係の破綻とは何なのか?
婚姻関係の破綻とは、簡単に言えば「戸籍上の婚姻関係にあっても、夫婦生活の実態がなくなっている状態」を言います。
例えば、離婚はしていないが別居状態にあり、お互い10年以上も連絡を取り合っていないような、夫婦とは名ばかりの状態のことです。
長年、連絡も取り合わず別居状態ということは、もう一度夫婦らしい生活を送る気もなく、離婚手続きをしていないだけで実際は離婚しているようなものです。
但し、婚姻関係の破綻は裁判で認定されるまでは成立しませんので、主張すれば即時に事実となるということではありません。
別居という行為
婚姻関係の破綻には「別居」という状態が大きく影響します。
通常、夫婦は同居するものであり、この別居期間が長ければ長いほど夫婦関係が破綻していると認められやすくなるわけですが、自分の配偶者の同意も得ずに一方的にする別居は「夫婦の同居義務違反」、法律的には「悪意の遺棄」と呼ばれる行為となります。
これは民法770条の条文にも記載されている離婚理由となる行為であり、悪意の遺棄をすると有責配偶者となります。
(裁判上の離婚)
第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
有責配偶者とは離婚請求・慰謝料請求の対象となる配偶者、責任を追及される配偶者のことで、自分が離婚請求をした場合は法的に却下されてしまいます。
つまり、勝手な別居は不貞行為を無効にするわけではなく、むしろ有責配偶者となる行為だということです。
別居後の不貞行為
「別居した後の浮気は不貞行為にならない」=「浮気するなら別居すればいい」というのは、悪知恵を働かす人がする誤解の一つではないでしょうか。
あくまで「別居した後の浮気は不貞行為にならないケースがある」のであって、浮気したければ別居すればいいよ、というのは間違いです。
別居は婚姻関係の破綻の条件の一つのようなもので、婚姻関係の破綻が認められるには他にも条件が必要となります。
つまり、別居後に浮気をした場合でも、通常は不貞行為が成立します。
冒頭の「すでに婚姻関係は破綻している」などという主張は、表面上を取り繕う、ただの言い訳に過ぎないケースや、往生際が悪いだけのケースが多いのです。